「幻の柑橘へべすを広めていきたい」宮崎県・三重県日向へべす株式会社K&Co. (後編）

TASTE STORYのインタビューでは、出店者さまへ商品にまつわる背景や思いなどお話を伺っていきます。地域のストーリーを、味わうように楽しんでいただけると嬉しいです。

前編のインタビュー内容はこちら>>

ーTASTE LOCALに出品されているジャムやパウンドケーキなどは、様々な企業さんと共同開発されているんですね。

田香子さん : 以前料理屋で働いていた時の繋がりもあったり、ハレの日ダックワーズを作ってくれている彦根市にある「いと重菓舗」さんは、歴史的背景から繋がったんです。

というのは、いと重菓舗は井伊直弼へ献上していた老舗の和菓子店です。

井伊直弼の姉が宮崎県延岡市の内藤藩へ嫁いでいて、それから井伊家は内藤家と養子縁組となったため、宮崎との繋がりがあるということを、実は以前インタビューを受けた際に、記者さんから伺って知りました。それから、歴史的繋がりも伝えていくために、宮崎のへべすを使ってお菓子を作ることになったんです。

パウンドケーキと黄色いヘベスのジャムは、K&Co.と契約農家の繋がりの中で、行政が動いて完熟へべすと名付けて実現化できた商品なんです。もともとへべすは緑色のものであるべきで、旬の時期を決めているため、今も黄色の実はJAに納めることはできないんです。

ただへべすは冬になると実が黄色になるだけなんです。緑の葉に緑の実なので、収穫期に見落としちゃうんですよね。なんとか黄色の実を活かせないかと、滋賀県近江八幡にあるアンデケンさんと試行錯誤２年をかけて、ようやく形にできたんです。

研究していった中で、10月に取れる少し実が黄色くなったへべすが美味しいと分かって、契約農家へ黄色の実を全部買い取るから作ってとお願いして、少しずつ協力いただける農家さんも増えてきています。

伸一郎さん : 宮崎地元の企業さんとだけでなく、各地の老舗さんとコラボレーションすることで、より全国区でへべすを知っていただけると思っています。

ー今後挑戦してみたいことはありますか？

伸一郎さん : すごい無限にありますね。K&Co.は三重県を拠点に活動しているのですが、三重県って山も海もあって、沢山特産品があるのを感じています。へべすを軸にして東海エリアの特産品や美味しいもの、地域で眠っている良いものと絡めて、何かもっと表現していけたらと思っています。そうすることで、宮崎県と三重県をへべすを通して繋いでいくことができる。地産地消も大事なんですが、県や地域で区切るだけではなく日本全体で力を合わせて、日本ならではのへべすを発信していける流れを作れたら、本当の意味で還元していけるんじゃないかと考えています。

実際へべす農家も、へべすの生産だけでは収益は全然足りないですし、若手の担い手も増やしていかなければいけない現状もあるんです。

田香子さん : 私たちはストーリーをすごく大事にしているんです。なぜ三重県なのか、なぜ宮崎県なのかということを発信していけるのは、私たちだからこそ出来ることだと思うんです。

今年の夏は大きなチャレンジを予定していまして、どんどん色々な方々を巻き込んで、もっともっとへべすを知っていただける場を増やしていきたいですね。

ーへべすを食べていただくかたにどんなことを伝えたいですか？

伸一郎さん：みなさん知らないだけで、ぜひ騙されたと思って食べていただきたいですね。酸味がすごくまろやかで、香りが優しいですし、柑橘類で特有の有効成分がへべすにしかないものが沢山あるんです。例えば亜鉛が多く含まれていて、抗酸化作用や必須アミノ酸の9種のうち8種が含まれていたり。

本当に美味しいですし、とにかく身体にも美容にもとても良いんですよ。

田香子さん：クエン酸というと、梅干しやレモンを思い浮かべると思うんですが、酸っぱいものを毎日食べ続けるってなかなか難しいですよね。特に子供のうちに、クエン酸をたくさん口にすると、味覚の発達に非常に良いと言われているんです。

へべすのシロップはとても飲みやすいので、食育の役にたてたら嬉しいですね。

ーTASTE LOCALを通して伝えたいメッセージはありますか？

伸一郎さん : 私たちの活動で特に重きを置いているストーリーがあって、宮崎県日向市では嫁入りの時、自分の家で育てているへべすの苗木を嫁ぎ先へ持っていくという風習があるんです。へべすはハレの日のものとして引き継がれてきたので、ぜひおめでたい日や大事な日にご家族や大切な方と食べていただけたら嬉しいですね。